人生、添い寝にあり!

添い寝の伝承

突然の松葉杖生活1/喪失と発見

転倒して歩行不可、レスキュー隊に運ばれ下山するという経験をした。現在松葉杖で生活している。想定外の30代の幕開けだ。骨折と靭帯損傷(MRI検査上では断裂しているか微妙な線とのこと)の診断で、患部を保護しながらの生活、その不便さにびっくりしている。通勤時間は倍かかるし、エレベーターが見つからないし、地下鉄の階段の長さは禍々しい試練のようだし、バスの昇降は恐怖体験である。もともと交通事故後のリハビリに携わる仕事をしていたのもあり、経験者が語る(語れない)哀しみ、後悔、苛立ち、期待、希望が反芻され、彼らの訴えていたその不便さが身に降りかかってきて不思議な気分でもある。想像力を働かせその上で言動を選ぶようにしていたものの、事故に遭うまでは本来の意味での共感は難しかった。後遺症の程度や生活背景と課題は異なるので、安易に共感とは言い切れないが、身体健常者向けに設計された社会から外れた地点という意味ではやはり共振するものがある*1

 

自身がいかに身体の健康に依存していたということがわかった。筋力で時間を買っていたというか。行き当たりばったりに動けたのも、予定を詰めて高速でスケジュールをこなせたのも、遅刻寸前で必死に走り抜けられたのも、思い立ったが吉日で遠くの海を訪ねられたのも、気になる美術館にふらっと立ち寄れたのも、毎日起床後10分以内に着替えてバスに飛び乗れたのも、小さな失敗を繰り返しても直ぐ修復可能だったのも、身体が健康だったからである。これからは傷んだ身体に合わせて生活様式を変えないといけないから、今までの成功体験を一旦捨てないといけない。一度エラーを起こすと修正に膨大なエネルギーが必要になる。だからこれからは、余裕を持って準備して行動する癖を持たないといけないし、そうしないと焦燥感と果たせない予定だけが残る。

もっぱらの不安は筋肉量の低下と身体のバランスが悪くなることである。もともと腕の筋肉量が多いのと体幹を鍛えていたので松葉杖はすぐに使い慣れたが、下肢が弱ってしまわないかが心配。直近二か月ほどボクササイズで鍛えて引き締まってきた尻を手放すことになったら悲しい。せっかく長湯とストレッチのお陰で血行も良くなってきたのに冷え性の身体に逆戻りである。しばらく計画性のない外出も、負荷のかかる運動も難しいだろう。しかしメリットもある。在宅時間が増えることで資格勉強が捗るだろうし身体そのものに集中できる機会でもある*2。そして、非常時だからこそ家族や親密性とは何かについて改めて考えていきたい。

まあ、そんな感じで新しい身体となんとか付き合っていけるだろうと思う。

 

ひとまず、親、夫、職場*3、腐れ縁には報告済。あんまり心配をかけないようにと思い、直近で会う約束をしている方以外に連絡する余力がなかった、許してください。室内では松葉杖なしで歩行可能なのでそこまで困ってはいないが、米を運んでもらえたら助かるかもしれないな。ネットスーパーを活用すればなんとかなりそうだけど。いつもありがとう、それではとりあえず来週手術検討してみます。

*1:自立生活運動の一環で、重度障害を持つ人達が交通公共機関や民間店舗に対してバリアフリーな社会設計を求めるために交渉していたり、高齢化に対応するために社会保険制度が整えられてきたり、精神疾患や依存症など見えない困難についての啓発が盛んになってきていることを考えると、腐らずに生きていけるのは過去の社会運動や先人らによる恩恵も大きいのだなと感謝するとともに、「社会が変わってくれ」というマインドを持ち続けようと周囲と笑いあったりした

*2:自由自在に動かせない身体でどうやって他者と触れあえるかについて試行錯誤するのも愉快かもしれない

*3:上司が使える保険がないかすぐに調べてくれ、同僚なんだから家のことも手伝うよと申し出てくれて有難かった