生殖の結婚/生殖と結婚

愛する腐れ縁の子を初めて抱いたとき、この日のためにわたしは生き延びたのかもしれない、なんてそんなことを思った。嗚咽のなかで諦めそうになりながら待ち望まれた命。一歳半になる頃には血縁家族と猫の次にわたしの名前を覚えたらしい。定期的に会って遊…

待ち望まれた野良猫のように

引き寄せられるような家がある。それらは本当に存在していたのか疑いたくなるような場所なのだが、しかし確かな身体の記憶と共にある。 特製のコーンスープを用意してくれた、子を欲しがっていた伯母さん夫婦の暮らす寮。中学生になって始めて迎えたクリスマ…

名乗ることの恥について

水曜日、職場近くの豆腐屋で自家製合鴨弁当が280円(特別価格)で売っていて、どしゃ降りの後の乾いたコンクリートを突き進み、ピクニック気分で駅前のベンチでそれを味わう。ハイヒールで新宿の街を駆けるのに疲れて、帰宅する頃には和室に敷いた布団に吸い…

去る者追わず、やがてひとり眠れて

10年前の冬、添い寝フレンドだった人の家をたびたび訪ねては、あれは何色だったかなあ、やさしい香りのやわらかい布団に包まって眠っていた。あの日は冬で、それは青いロングスカートだった。駅のエスカレーターが昇る間にカシャカシャという音がして、振り…

墓場でキスをする(2021年6月近況)

『青野くんに触りたいから死にたい』というとんでもない傑作がある(なので15年ぶりくらいに月刊誌を購入してしまった)。 数日間付き合ってすぐに死んでしまった恋人「青野くん」が不在の世界で生き続ける意味はないと強迫的に後を追おうとした優里ちゃんと…