《自分の命日》のようなものがある人の役に立てればいいなと思って、この記事を書く。
性暴力被害や死別の話が続くので、あなたの体調に応じてあなたに負担の少ないタイミングで読んでほしいです。
アニバーサリー・リアクション(記念日反応、命日反応)と呼ばれるものがある。自分にとってかけがえのないものとの死別であったり、震災、事故、事件などのPTSDに関連するトラウマ的な出来事が起きた時期(節目)になると起こりうる心身症状をいう。
例:
不調と手をつなぐ ~記念日(命日)反応について~ | 協会ブログ| 一般社団法人 日本グリーフ専門士協会
アニバーサリー(記念日)反応について | 石川県臨床心理士会
今月半ばに、毎日LINE連絡を取っているAさんから「もしかして調子悪いですか?」と言われて、連勤の過労と思っていたものが、アニバーサリー・リアクションだったと自覚した。
一月は、十四年前に私が性暴力被害に遭った月なのだ。魂の殺人という言葉はちっとも好んでこなかったけれど、自分の命日(肉体を一時的に喪失した決定的な日)だと思うと、やはり、しっくりくる。
それに加えて、今月は祖母の十三回忌、知人の病死が四件も重なっていた。明日は二件の葬儀が私を待っている。
そのような状況だったのに、仲間の声かけなしには自分の体調不良に気づけなかった。
思えば、以下のようなことが起きていた。
・添い寝したり、他人の身体が隣にある夢を何度も見ていた
・あの人が羨ましい、という感情が増えた(普段はほとんど思わないのに)
・文章がうまく構成できなくなり「どういう意味?」と上司に複数回つっこまれていた
・便秘気味になっていた(普段は快便)
・月経が来ていない(因果関係は不明だが、これまでは生理周期は順調で、まったく無いのは初)
正確には、気づきたくなかったのだ。記憶に蓋をしていた。気づいた途端にガタッと体調を崩してしまうから。
以降、今週は自分の体調に振り回されている。
・仕事以外の時間、(公共の場でも)ひとりでいると涙が止まらなくなる
・涙が止まらないので眠ることができず、寝坊する(3日間)
・SNSができない(他者の投稿もほとんど見れない)
・強制終了するように、気づいたら床で寝ている(お風呂を準備したのに入れない、自炊した料理を冷蔵庫に入れられない、すべて点けっぱなし)
・外部刺激を減らして、遭難船としての布団にくるまって、とにかく朝が来るのを待つような心境で、時間間隔が希薄になる(そのタイミングで偶然、友人から「泊まりに行っていい?」という連絡が突然入った。やっと朝が来た、と思った)
・突然の殴られるような頭痛(精神的に弱っている時にいつも発生するもの)
・呼吸が浅い
そこで、以下の思考と行動が対処法として役立った。
・今起きていることは、情けないことでも恥ずかしいことでもない。アニバーサリーリアクションで、当たり前の心の反応なのだ、という自覚
・いちじくさんの作品をひたすら鑑賞
・自分のルーツに関連するアーティスト(今回は一青窈)の曲を鳴らし続けて、とにかく涙が流れやすいように導線を作った
・四年ぶりに、号泣しながら性暴力ワンストップセンター*1に緊急電話相談をした(トレーニングを受けた第三者に、今回自分の身に何が起きているか、どのように日常生活に支障が起きているかを説明。性暴力の後遺症ともいえる対人関係への恐怖についても語り、状況を整理させてもらう時間を作った)
・知人らの病死については、遺された人たちと「きつい」「かなしい」「くやしい」「故人のここが好きだった」という感情の共有の場を取り急ぎ持った
・現実の世界で他人に寄りかからないように、夢の中だけ他人を抱きしめる自分のいじらしさ、みじめなほどな不器用なかわいさを、愛おしいと率直に思うことができた
・1時間単位の早退(今月は超過勤務が発生していたので調整が叶った)
デンマーク帰国報告会では何度も「健康になりました。ハッピー!」と堂々としていたけれど、この有り様だ。しかし、これも私の身体と心なんだから、付き合っていくしかない。性暴力被害から十年目の節目(二十九歳時)もアニバーサリー・リアクションがひどかったが、今回は知人の死が重なったことが大きな引き金になったと推測。とはいえ、まだこの先も生きていくのなら、人の死に目に遭う回数はもっともっと増えていくと思う。そうなると、毎年この時期を見越して対策を打たないとさすがに自分の心がもたないのではないか…、とちょっと怖くなってしまった。
昨年の一月はデンマークに滞在していて、まったり時が流れて心は安寧だった。いちばんは、冬季だけ海外に滞在するのがいいのかもしれない。そのためにはあと三倍くらい稼がないと成立しないんだけどね(とほほ)。
どんなトラウマであれ、命日を持っている人は、崩れてしまいそうな時期がやってくることがある。今年の一月に至っては、私もまだ遭難中ではある。
私たちは、ほんとうに、頑張って生きている。普段あまりその話をすることはないけれど、間接的にでも知恵や対処法を交換しあえたらいいし、お互い、深く深く息ができたらいい。あまりに身近なものとの別れをいつだって、十分なほど悼めますようにと、そして、この身体に残るやさしい記憶や感覚を祝えますようにと、そう意志しています。
読んでくださり、いつもありがとうございます。
Playlist
一青窈/夢枕
https://youtu.be/KjZB5fFBRjE?si=oMt8ysaJ-jdHqJRh
一青窈/ひとりでに
https://youtu.be/M8y10xRWVBk?si=kUwX1freO_IK3Wll
一青窈/つないで手
https://youtu.be/pYnDS_woqVQ?si=akTKxdugt28ApIwN
一青窈/年年歳歳
https://youtu.be/-i5He2UuoOg?si=Ad-UnYVyU2eEjbuj
*1:メール対応もある。性被害直後でなくても良いのかな、もっと緊急の人がいるのではないかな、対応させて申し訳ないな、と感じてしまいがちだけど、過去の被害も話して良い場所。もしも相談員の対応に違和感があったら無理せず、終わらせても大丈夫。完璧ではなくても、話が通じると思える相談員やサバイバー仲間と必ずどこかで出会えるから諦めないでほしい