人生、添い寝にあり!

添い寝の伝承

突然の松葉杖生活5/手術の準備と心構え

前回の投稿から少し時間が経ってしまったのは、仕事が立て込んでいたからかもしれない。あんまりよく覚えていない。新年度からは今以上に裁量的に働けるようだ。助成金額をこの一年で管理しなければいけないので、年間計画を立てていた。そうするうちに春がきた。あっという間のことだ。咲き誇る木蓮を横目に、ようやく定期リハビリが終わり、あとは手術に備えることになった。片方の足だけ一足先に未来に行ったというか、老いた(機能が落ちた)のだなぁという認識になっている。でもどうしてもタップダンスを習いたいので、手術が無事成功することを願いたい。

 

入院予定の病院は「多様な家族」への医療同意等に賛同しており、専用アプリに未婚のパートナーの個人情報等を入力すると家族/キーパーソンとみなされる仕組みがある。素晴らしい取り組みなのでもうちょっと強くアナウンスしてほしいなとも思う。ホームページでその情報を発見したあと、それだけで心理的に安心できたからだ。ただ私の場合は既婚者(知人男性との間に公正証書/婚姻契約書を作成している)のため、対象から外れることがわかった。手術の立ち会いを申し出てくれた腐れ縁の女の情報を登録したかったのにとても残念だった。医療から法律婚(=異性愛と生殖を前提とした単数婚)に準じる必要性を示された場合は太刀打ちができないのだ・・。

 

日本の婚姻制度は単数婚(モノガミー)という文化慣習の中にある。配偶者は一人という前提で、その人が緊急連絡先かつ意思決定の代行者とされがちだ。パートナーが複数いることはあまり想定されていない。複数の身内がキーパーソンを兼務できるのは成人した子どもと(元)配偶者/叔父叔母のチームであるとか、極めて限定的だ。特に法で定められていない関係は社会的信用を得にくい。しかし有事の為に社会的関係を何が何でも維持させるという発想を私はあまり好まない。自由に解消できるように一年更新制の婚姻関係としたのもそのためだ。そういう意味では「元」配偶者を複数持てたら良いのかもしれない(重婚が認められていない社会でのライフハックとして)。

 

しかしとりあえず、今は現実に対処しなくてはいけない。全身麻酔のための麻酔同意書、そして手術同意書、そして術後せん妄があった場合の身体抑制同意書が必要で、説明を受ける。「お身内の方にサインを、そして手術の結果を知らせるための緊急連絡先を教えてください」と指示を受けて帰宅する。

さて、どうしたものか。家族に頼らなくては、という発想が薄い(そもそも夫は山奥暮らしで東京に戻らないし携帯も所持していない)ので、夫を含む縁のある4名に相談をした。

 

結果、

Aさん:医療同意書のサイン

Bさん:手術日の緊急連絡先、クレジット決済不可の場合の立替

Cさん:メンタルケア(彼女の子ども=愛するメタモアの動画を送ってもらう)

Dさん:退院日迎え→車で自宅送迎、食材買い出し

 

みたいな分担ができあがった。※書類には続柄の記載がないので、口頭で親戚等と表現するかもしれない*1

みんなの厚意が本当にありがたいし、それが回復への意欲にもつながっている*2。そして一生免許を取るつもりがなかったのに、逆の立場になったときに運転能力があると人助けが出来そうなので、教習所に行くのを検討し始めてもいる。

今回の分担は一度きりかつ緊急性の低い手術だからこそ成り立ったけれど、命にかかわる場合・病院と密に関わり長期的な治療体制を形成する場合・意思表示が出来ない又は重度障害が残り退院後の継続的ケアが見込まれる場合にはこのような形は難しいとも思われる。その時はその時で、まず現実を引き受けて対処して、困ったら外部に助けを求めてやっていくしかないだろう。基本単位は自分一人で、身内はいませんと堂々と振る舞っても良いだろう。先回りして準備しすぎても不自然なので(これまでの個別の関係を軽視して未来のケア役割を押し付けるのは乱暴だと思うので)、その都度対応するしかない。やはり元配偶者を増やしておくのが良いかもしれない(自分が相対的に健康なら、喜んで元配偶者という名前を活用して、緊急連絡先等になれるし、そして関係を壊さない範囲でケア役割も担えるかもしれない*3)。

 

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家族/パートナーだから●●しなくてはいけない、という掟がそもそも私の中に組み込まれていないのだ。現行の婚姻制度がマイノリティの存在を排除している状況、例えば大事な人の死に目に立ち会えない状況を許しているのが腹立たしいという理由等も重なって、ごく当然のこととして、荒らし方・壊し方・創り方・オルタナティブな在り方を模索している。役割を放棄して、時に引き受ける。譲れないままで、変化を愛する。誰かのために怒り、誰かが代わりに怒ってくれる。名前が定まっていなくても、他者*4との繋がり方は、本来多様であるはずだ。それを社会生活の中でこそ、開放的に実践していきたい。いつもそんなに上手くいっていないんだけど、静かに見守って下さる人の存在に助けられている。疲れたときは、良かったら私のことを思い出してほしい。

 

*1:つまり関係性を偽らないといけない

*2:気分を上げるため、入院部屋着を新調し、美容院でパーマをかけた。松葉杖を凸るためのステッカー情報も引き続き募集中(既に一件素敵な情報ありがとうございます)。美味しいものを贈ってもらうのも嬉しい。しかし誰かのケアをしたり御礼に回る余裕が今はないのでお返しは出来ません、すみません

*3:戸籍上同性同士でも公正証書を作成したらなんとか元配偶者という属性を手に入れることができるかもしれない

*4:非人間の場合もある。私にとっては実家の犬のような愛らしい存在だったりする