人生、添い寝にあり!

添い寝の伝承

10人と入れ替わり暮らしてみる(2021年2月近況)

同居人(夫)がスノボ生活に専念するため短期不在になったことで、気のいい友人や奔放な仲間たちが次々と泊まりにきてくれている。

 

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ちょうど7年前、以下のような実験的生活を送っていたことを思い出す。

1週間限定シェアメイトを募集しています。(10月末で終了となりました) - blog.922(移転しました) (hatenablog.com)

 

当時は3人の他者と入れ替わりで1週間を共にして、まずまず健康で文化的な生活を送った。寮母さんに向いているねと言われたりとか、夜本当にやることないねと笑ったりとか、料理を作りあって味の違いを面白がったりした。そのうちの1人の男性とはまるっきり初対面だったのに軽やかに仲が深まり一昨年は滋賀の実家に挨拶に行くなどよくわからない展開にもなった。

そして今回は10人の他者(前回と違ってある程度気心知れた人達)が入れ替わり同居してくれて、数日間を共にした。セクシャルな関係の人もいたがそれは少数で、基本的には別々の布団あるいは部屋で眠った。入浴、食事、睡眠、細やかな所作、それぞれ生活の振舞いについて個別性があり面白かったし、同様に相手も生活者としての私について良くも悪くも色々感じただろうなと思った。多様な人と暮らしてみると、自分の至らなさ(面倒な嗜癖や習慣)とか、他者の存在のありがたみを改めて感じてしまう。矛盾だらけで気分屋の私と6年も同居できている夫は凄まじいほどに強者だし、お互いがあり得ないくらい自己中心的に振舞うことによって最上級の寛容な状態を維持していたのだということも理解できる。また同居する相手を毎日固定せずに柔軟にやっていけたほうがストレスがないとも感じたし、愉快で安定した暮らし(=私にとっての快適な暮らし)とは何だろうなという疑問に立ち返った。

どんな暮らしであれば快適なのだろう。適度に招いたり訪れながらの単身生活がそれに値するのかもしれない。あるいは特定の大人3人を固定して、追加で誰かが自由に転がり込むという暮らしが理想的強度かもしれない。添い寝フレンドだった人のような存在を探して、それは深く深く眠れたらそれで十分なのかもしれない。かといって、20歳の疲れを知らない脳と肉体の所有者だった頃とは違う。めぐる季節の中で、目移りしたものに飛び乗れるエネルギーも、目の前の相手との生活をあっさり捨てられるような速度も失ってしまった。身体は一つしかないし、加齢と共に体力は消耗するし、そこまでお金もないし、昼間は労働に縛られているし、精神的な弱さで周囲を振り回すようなことも減ったからである。手放せない思い出も積み重なって、自身や他者を丁寧に扱わない人に捧げたい時間も余裕もなくて、それゆえに身体に鈍さも感じる。

しかし人生はあっという間に終わる。いつだって急に喪失してしまう。自身の健康が損なわれていくとき、社会の仕組みに頼らざるを得なくなることを考える。有事の際のセーフティネット、ある種の特権とされているのが「婚姻関係(付随する家族制度)*1」である。しかしその制度を選択せずに、あるいは選択した上でその中身を戦略的に拡張させながら、多様な他者と助け合って生きていく道を探りたいとも思う。その意味では、今回の性別も年齢もライフスタイルも多様な10人との生活は、成人間のケア・ネットワークそのものだった*2し、余生をどう愉快に満たすか考える上で参考になる経験だった。ひとまず来月も同じように他者と暮らしてみて、仮定でも良いからなんらかの結論と方向性を定めたい。

 

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毎月浅草橋にて読書会が開かれている

最小の結婚: 結婚をめぐる法と道徳

本書が、結婚と養育をいったん分離し、むしろ「結婚」の再定義に着手する点は興味深い。結婚と養育の分離はすでにファインマンが提起しているところであるが、彼女が法的カテゴリーとしての結婚を廃止し、他の社会関係と同じ規則(契約法や財産法)によって統括することを提案するのに対し、本書は(母子ではなく)成人間の ケア関係を、国家が依然として保障すべき価値とみなす。そして、これらケア関係の維持を可能とするための権利(在留や居住、病院や刑務所での面会権など)が国家によって付与されるために、「結婚」という法的枠組みを必要とするのである。このように結婚を成人間のケア関係として切り取るなら、異性か同性かの区別が重要でないのと同様、性愛関係である必要もなく、また排他的な二者間に限定する必要もない。むしろ、性愛に基づく関係のみに特権を与えることで、友人関係や成人間のケア・ネットワークが差別されてきたことに著者の問題意識がある。

参照:ジェンダー研究 第23号(通巻40号) | (ocha.ac.jp)

 

*1:社会的に承認されうる関係性であり婚姻に準じる関係性を含む。今はまだ、異性愛で、一対一で、恋愛や性/生殖をベースとした関係性が結婚の条件として想定される

*2:私が一方的に助けられただけだったかもしれない。それでは意味がない。目指したいケア関係というのは、いつでも関係解消できる自由が担保できてかつ相互に与えあえるものがある、総合的なバランスの上に成り立つものだと思う