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逃げ恥のような世界を目指しても道のりは遠く儚いにゃん

昨日ついに、『逃げるが恥だが役に立つ』の最終巻が発売された。

TVドラマが大評判で、既に内容はご存知の方も多いと思うけど、原作は少女漫画。「主人公が就職としての結婚を提案、雇用主である夫に家事分を給料として支払われ、結婚生活の運営ルールを二人で決めて、契約結婚をする」「非恋愛関係の結婚だとは周囲に言えないまま、色んな危機を乗り越えたけれど、自体は思いもよらぬ展開に…」という現代チックで斬新なストーリー。

(以下、軽いネタバレあるので注意)

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軽くネタバレをすると、同居する中で、お互いにスキンシップ欲がわき、「月二回ハグをする」案が出て、「契約恋人(恋愛関係の良いところ取り)」が始まるのです…。

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(全ての出典 海野つなみ逃げるは恥だが役に立つ』)

 

この物語の素晴らしいところは、多くの人が無自覚のうちに陥る「恋愛感情があるから(恋人だから)」「妻/夫なら」「男/女なら」という役割観念に囚われず、一個人としてお互いを尊重し、絶え間なくパートナーシップを築く努力をしている点。現状に不満があれば、会議を開き、ベターな打開策を提案し、試行錯誤しながら協働してオリジナルなルールを設定している点にある。

ドラマ化したことで漫画以上に幅広い層への問題提起となったかもしれない。

セックスの合意に関しても家事労働や金銭管理に関しても、一方が我慢し続ける関係性にならないように(搾取にならないように)点検し続けること。夫婦/恋人であっても、いくら愛情があると思っても、それを理由に、個の意志の尊重すること(自由だと思えて、NOが気軽に言えて、NOを言われた側が不機嫌にならない関係性を作ること)、そして日常継続の可能性を模索するための対話を軽視してはいけない、というメッセージ性を強く感じた。

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(TV版ではガッキー主演。【好きの搾取】というパワーワードがお茶の間に流れたの凄い) 

主人公のみくりが、男性と対等に意見を述べ、利己的で主体的な考えを持ち、自分の人生を切り開いている女性というのも良い。そして他のキャラクターも個性的で魅力的だ。みくりの契約夫である「平匡」は高齢童貞という設定で恋愛に免疫がないエンジニア。平匡さんの同僚で、超イケメンでモテモテだけど結婚や恋愛に期待や希望を抱けない「風見さん」、オープンゲイである「沼田さん」がいて、後半には複数恋愛を楽しんでいる「五十嵐杏奈(ポジティブモンスター)」も登場する。そして「実はもう一人の主人公だったのでは?!」って思うのが、みくりの叔母である「百合ちゃん」。

 

百合ちゃんは安定した仕事を持っている独身未婚女性。五十代処女という設定。

(「どうしても五十代の女性には見えない絵」といいながらも全巻を読み耽る夫。)

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最終回、この「自分に呪いをかけないで」という場面*1には多くの人がハッとさせられたとの意見多数。漫画でもウルっときたもんね。

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余談だけど、よしながふみ『大奥』六巻の綱吉編で、「・・・・生きるという事は、女と男という事は!」と右門之助が叫ぶ場面を思い出した。

 

海野つなみ先生ありがとう!!出会えてよかった!!って思うのは、『恋愛結婚』することが素晴らしく、一部の層にはステータスにもなっていて、『共働きでも、家事は女が主体的に頑張ろう、とされる暗黙の了解』があって、『結婚しているのか問われ、子どもはいつ?と出産すること前提で語られる』ことの多い社会がしんどいから。

「恋愛結婚でなくてもいいよね」「共働きなら尚更、家事分担やお金のこと相手とちゃんと話し合わなきゃね」「子なし人生も良いね」「子どもが欲しいといっても、だれでも妊娠できるわけじゃないからね(不妊率は6組に1組ともいわれている)」とさえ気軽に語れないと感じるのは私だけかしら。未婚や非婚を選ぶ人もいる、性的経験の無い人や不要の人もいるし、子どもを持たない家族や、子を失った家族、養子を迎え入れる家族もある。いろんな性的指向の人がいる、同性同士のカップルもいれば、恋愛感情に起因しない人間関係の在り方もあるのにーーーーー。

 

今年からわりと大きい会社に勤めることになって、そこはいろんな悩みを抱えたお客さんが来る場所で、たとえば自分にとって身近な「事実婚」「子なし夫婦」だとか「LGBT」「サバイバー」等に強い相談員もいるだろうななと期待したけど、そんなことはなかった。あくまでマジョリティ前提の恋愛や結婚、出産観という感じで、職場では初対面の人に「結婚してるの」「子どもの予定は」と聞かれてばかりでしんどいです。友情結婚事実婚)を選んで子宮内避妊具挿れて自分なりに人生設計頑張ってます!って、わざわざそれを関係性の浅い上司に語れるかバカヤローという気持ちになってる。偏見浴びるのやっぱり怖い。愚痴ってごめんなさい。

 

性的マイノリティ*2への想像力がある(最低限、一方的に相手を「異性愛者」「肉体の性別と精神の性別が一致している」と決めつけない環境がある)同僚がいる職場でしか働きたくない、というのは決して高望みではない、はず。職員全員に対し、啓蒙や人権教育をするべきだと主張したいわけでもない。NOが示せる空気や関係性があってほしいし、望まない場面で性に関する選択をカムアウトしなくて済むように、ただ普通に過ごしたいだけだ。

ある程度、技術を身につけたら次の職場を探したい。『逃げ恥』のように、いろんな人生の形を、いろんな愛の形を、独断と偏見でジャッジせずに受容できるような環境を探したい。そう思うと、前の職場ではわりと自然にセクシャルマイノリティの話題を振れる同僚が一人いてさ、それだけで大分心が軽かったなと思う。失ってから恵まれていた事実に気づく。どんまいである。理想かもしれないけれど、自分を押し殺さないと生きられないのであれば短い人生損してる気がするから少しずつでも環境を変えていきたい。まずは第一歩。

 

先月、こちらの冊子を二十部注文した。本当は職場に置きたいけど様子伺ってる。とても良い資料なのでセクシュアルマイノリティについて知りたい人いたら読んでちょ。

性的少数者も医療や福祉を受けやすく 支援団体が啓発冊子
http://www.sankei.com/life/news/160226/lif1602260010-n1.html

冊子『LGBTと医療・福祉(改訂版)』PDF
http://qwrc.org/2016iryoufukushicmyk.pdf

 

 

 

 

*1:「加齢」を「劣化」と揶揄する人は多いし「特に女性は若いほどいい」という風潮がある。だからやたら「若さ 」を讃えたり、「加齢」を恐れる人が増える。でも、私は、年を重ねることを楽しみ、自由でいきいきと生きる年上の友人を多く知っている。美しいと思う。自身も年を重ねるのがとても楽しみ。

*2:LGBTに限らず、「性に関連する事柄(恋愛や結婚、生殖)についての状態、選択、価値観が社会的に少数派である人/差別意識や偏見を持たれやすい人を想定